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自然派ワインとは?初心者も分かる基礎編

日本のレストランやワイン店、酒屋さんなどでも、最近見かけることが多くなった「自然派ワイン」。ヨーロッパを中心に自然派ワインの人気が高まっています。何が普通のワインと違うのか。また、オーガニックワイン、ビオワインなど、似て非なる名称や、様々な認証マークをみかけるようにもなりましたが、違いは何なのか。
今回は「自然派ワイン」と言われるものについて、普通のワインとの味や見た目の違い、造り方の違い、そしてブドウそのものの違いなどをまとめてみました。
そして、私が何より大事だと思っている❝何故手間をかけて自然派ワインをわざわざ造るのか❞という、その哲学についてもご紹介します。

1.ワインの認証やカテゴリー

世界各国や各地域で、様々なワインの認証制度が存在します。
ボトルのラベルも、ビオワイン、オーガニック、有機ワイン、ビオディナミなど、似て非なるものがたくさんあり、分かりにくいのが現実です。実際に互いに意味が被っていたり、包括的に捉えたカテゴリーであったりもします。

【オーガニック、ビオ、有機とは?】

農産物全体で使われる言葉として、「オーガニック」という言葉は、日本語では「有機の」という訳になります。フランス語では「ビオロジック」、ドイツ語では「ビオロギッシ」、イタリア語では「ビオロジコ」といい、EU諸国全体で、「BIO(ビオ)」と言ったりします。
ワインの世界でも同様に、化学肥料を使わず、ブドウも醸造も自然のものを出来るだけ使っているものが当てはまります。しかし全てが完全にというわけではなく、ものによって、度合いが異なっているのが現実です。そして認証制度も何処までが自然であるのかなどのラインがそれぞれに異ります。

【無農薬有機ワイン、ビオディナミワイン】

先にあげたBIO(=オーガニック、有機)は、日本やアメリカなどの制度では、実は使っていい農薬があったりするため、厳密な無農薬とは言えません。一方、無農薬有機農法は異なります。
・無農薬有機農法
 殺虫剤、除草剤、化学肥料を一切使用しない農法です。もし"無農薬“と書かれている場合、オーガニックや有機
 で認められる農薬を含め、一切の農薬が使われいないと考えられ、完全無農薬ということになります。消費者に
 とっては分かりにくいところです。
・ビオディナミ(バイオダイナミック農法)
 ある意味、BIO(ビオ)の一つでもあるのですが、シュタイナーが提唱する天体や生態系の摂理に則った農法 
 で作られるものです。例えば新月などのタイミングで作業の開始を始める、牛の角に土を入れて土づくりをする
 など、特徴的な方法があります。神秘的な手法ですね。

【自然派ワイン】

「ビオワイン」などには、認証がいくつかありますが、「自然派ワイン」には認証制度がありません。法律で厳密な定義がないのです。現時点では、「自然派ワイン」と言われているものは、造り手さんのそれぞれのこだわりで、より自然に即した土壌づくり、ブドウ栽培、醸造方法で、ビオディナミ農法なども取り入れたりなど、自然を尊重したワインということになります。
効率化重視、大量生産のワインではなく、自然の循環、生態系、環境のことなど大きな視野で造られることが多いのが自然派ワインの特徴と言えるでしょう。逆に、認証制度がないために、ビオワインよりも忠実に自然に即して造っていても認証ラベルが貼っていないので、普通のワインと見た目が同じになってしまう=見た目では違いが全くわからない、ということがあります。
しかしながら、「制度に振り回されるのは意味がない。昔ながらの、または自然に摂理に則ったワインを造る」というポリシーをもった自然派ワイン生産者が増えてきています。明確な決まりに則ることよりも、造り手さんが納得し、自然の恵みを有り難く活かし表現するワインが「自然派ワイン」と言えるのかもしれません。

2.自然派ワインの造り方の特徴

【自然派ワインの酵母】

培養酵母を使わず、ブドウその物についている野生の酵母を使用します。発酵食品と呼ばれるものは、ワインに限らず、世界に様々なものが存在します。日本もまた発酵食品が多い国ですが、天然の=自然界に存在する酵母をそのまま使うということは、少なくなっています。化学的に造られたり、天然の物を培養し大量に化学的な手法を使って増やすというのが、ほとんどです。しかし、自然派ワインには、野生の酵母を使う昔ながらの本格的な物があります。現代では希少であり、労力を必要とし、難しい方法になります。

【自然派ワインの澱引き】

発酵を終えた酵母や赤ワインの皮の残りである澱を取り除くことを最小限にとどめます。一般的には、これらをフィルターなどを通して、全て取り除くのが通常です。しかし澱には、雑味があるかわりに独特の風味や旨味があり、澱があることが自然です。それらをろ過してしまうのではなく、活かすことも自然派ワインの特徴です。

【自然派ワインの酸化防止剤】

ワインが酸化するのを防ぎ、微生物の活動を抑えるために亜硝酸塩(SO2)が普通使われます。昔から使われてはいますが、これを全く使用しない、あるいは極力減らしているのが自然派ワインの特徴でもあります。
酸化防止剤の役目としては、安定したワインを消費者に届けることができるというメリットがあり、特に日本の場合、欧州をはじめとする外国から輸入する時に役立っています。しかしながら、酸化防止剤はワイン本来の特長を失ってしまう事実もあるため、自然派ワインでは添加を控えています。また、二日酔いや頭痛の原因になるとも言われ、体調や健康のことを考えて、自然派ワインを選ぶ人も増えています。

【自然派ワイン造りの難しさ】

大量生産、低コストが可能な現代のワイン造りとは異なり、土壌づくりから瓶詰までの手間がかかります。そのため高価になることや、生産や品質に安定性がないのが現実です。また保存の問題もあり、流通に関しても難しいことが多々あります。逆に言えば、それらの問題をある程度クリアし、飲む人にとって美味しいワインとなるようあらゆる工夫をし、試行錯誤しながら造るのは、本当に頭が下がる思いです。

【自然派ワインの哲学】

効率重視のワイン造りから、自然の恵みを最大限に生かしたワイン造りに立ち返ることです。
大量に出来るだけ簡単で安価に作る農法や醸造、流通を見直し、原点回帰した方法に近づくワイン造りといえます。自らが追求するよりピュアで自然な方法を採用したワイン造りをすることにより、各国の品質保証から外れる作り手もいます。このブログの最後にもその哲学を表現した造り手さんたちの思いや言葉が紹介しますので、是非、読んで下さい。

3.自然派ワインの見た目・香り・味の特徴

・スティルワインであるのに発砲していることも。SO2不使用ゆえに酵母が瓶内で再発酵することもあります。
・濁りがあることも。ノンフィルターのため、オリ(澱)なども多いことがあります。そのため購入後、静止させておく
 ことと、静かに注ぐ必要があります。
・色が少し異なる。赤ワインの色が薄かったり黒っぽかったり、白ワインの色が濃く「オレンジワイン」など言われる
 こともあります。
・酵母の香りがすることがあります。またその他微生物の働きにより、独特な香りがすることもあります。「ビオ臭」
 などと言われ毛嫌いされることがありましたが、最近ではこれも出来るだけしないよう造られるものも増えてきまし
 た。

味が特徴的、癖があることで、飲みにくいと感じるものもあるでしょう。しかしそれが自然派ワインの魅力となり、より自然を味や香りでダイレクトに感じることができるのが、素晴らしい点です。更に最近では、飲みにくさを改良した自然派ワインがどんとんと増え、非常に素晴らしくクオリティーの高い美味なものもたくさんでてきています。益々、自然派ワインファンが増えると私は予想しています

4.おすすめの自然派ワインの本

自然派ワインは、実に様々ですが、共通して言えるのは、貴重な造り手さんの愛情がこもったワインだということです。各造り手さんがポリシーをもって、手間を惜しまずに造り上げたものですので、より感謝しながら大切に頂こうという気持ちになるでしょう。
この生産者さんのこだわりや努力、そして自然を大切にしようという熱い思いなどを含めて、自然派ワインのことが分かる本をご紹介します。

『自然派ワイン入門』 ㈱エクスナレッジ出版 ¥2,800円+税 初版2017年6月
著者は、フランス人女性のイザベル・レシュロンさんという自然派ワイン推奨者です。

以前は、ワインを説明した本はあっても、自然派ワインだけを取り上げた本があまりありませんでした。しかもこの本は読みやすく、写真も多いので、難しくなく読めると思います。特に私が気に入っているのは、自然の素晴らしさを教えてくれるところです。様々な造り手さんや専門家、著名人の自然派ワインにまつわる思いを一文に表現されたものが、いくつか掲載されています。その一部を最後にご紹介したいと思います。

●「自然派ワインは新しものではありません。かつて全てのワインは自然派でしたが、珍しいものになってしまいま
  した。大海の一滴にすぎませんが、なんて大切な一滴なんでしょう。」
●「土壌が破壊すれば、国が破壊される ~フランクリンルーズベルト~」
●「人類史上初、テロワールなしで、科学薬品だけでワイン造りが可能となっている時代になっている」
●「私たちは親から地球を引き継ぐのではない。子どもたちから借りるのだ。」
●「オーガニック農園とは、正確には特定の農法や物質を使いそれ以外を避ける農園ではではない。自律性、独自性、
  そして恵み深い生物の依存関係という自然システムの構造を模して作った農園のことだ。」
●「自然派ワインを顕微鏡で見ると、まるで小宇宙のよう」
●「最も偉大なワインとは、それ自身の自然の特質によって喜びを与えてくれるワインだ。その自然の味を不明瞭にし
  かねないものは混ぜ入れてはならない」
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